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M-1グランプリの決勝進出者は、予選の時点で決まっていた!?出番順を考察してみた

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 M-1グランプリ2020の決勝進出者のメンバーを見て、気になることがあった。

 「アレ、これほとんどが2回戦でトリを務めたメンバーばっかりじゃね?」

 そう、実は決勝に進出した9組のうち、約半分に当たる4組が、2回戦のトリ(最後に出演する人)を務めていたのである。さらにいえば、2回戦の14公演でトリを務めたメンバー全てが、次の準々決勝に駒を進めている。

 もしかすると、2回戦の出番順の時点で、出場メンバーがどのように峻別されていくのか、そのロードマップはだいたい決まっていたのではないか?

 今回はこの謎を探るため、M-1グランプリ2020の出番順と、2回戦→準々決勝→準決勝→決勝のメンバー選考の関わり合いを考えてみる。


■決勝進出9組のうち、4組が2回戦でトリを務めていた!

 まずは2回戦のトリがどのようなメンバーだったのか、という基本的なところから押さえておこう。前述した通り、M-1グランプリ2020の2回戦は全14公演が開催され、当然、トリを務めるメンバーも14組存在する。この14組の準々決勝進出率は100%。各公演の詳細とメンバーは以下の通り。


(01)10/26 よしもと漫才劇場 トリ:学天即(準決勝敗退)

(02)10/27 よしもと漫才劇場 トリ:藤崎マーケット(準々決勝敗退)
(03)10/28 よしもと祇園花月 トリ:見取り図(☆決勝進出)
(04)10/29 COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール(昼開催) トリ:金属バット(準決勝敗退)
(05)10/29 COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール(夜開催) トリ:デルマパンゲ(準々決勝敗退)
(06)10/31 よしもと有楽町シアター(昼開催) トリ:くらげ(準々決勝敗退)
(07)10/31 よしもと有楽町シアター(夜開催) トリ:錦鯉(☆決勝進出)
(08)11/01 ルミネtheよしもと トリ:四千頭身(準々決勝敗退)
(09)11/02 ルミネtheよしもと トリ:マヂカルラブリー(☆決勝進出)
(10)11/03 ルミネtheよしもと トリ:トム・ブラウン(準々決勝敗退)
(11)11/04 よしもと有楽町シアター(昼開催)トリ:すゑひろがりず(準々決勝敗退)
(12)11/04 よしもと有楽町シアター(夜開催)トリ:ぺこぱ(準決勝敗退)
(13)11/05 よしもと有楽町シアター(昼開催)トリ:ラランド(準々決勝敗退)
(14)11/05 よしもと有楽町シアター(夜開催)トリ:ニューヨーク(☆決勝進出)


  2回戦各開催でトリを務めたメンバーは、その後の成績も優秀である。この14組のうち、準々決勝→準決勝を遂げたのは7組(50%)、準決勝→決勝を遂げたのは4組もいる。その4組とは、見取り図、錦鯉、マヂカルラブリー、ニューヨークだ。

 決勝のストレートインはわずか9組のみ。そのうち半分弱に当たる4組が、2回戦のトリから選ばれている。かなり高い数値といえるだろう。

 

■トリだけでなく、「モタレ」も「シバリ」も強かった!

 調べていくうちに、2回戦のトリを務めたメンバーだけではなく、モタレ(トリの1つ前、ラスト2番目)、シバリ(トリの2つ前、ラスト3番目)を務めたメンバーについても、その後の準々決勝、準決勝で好成績を収めている傾向があることも見られた。

 準々決勝進出者のうち、2回戦各公演のラスト3番手(トリ・モタレ・シバリ)を務めたのは42組(14公演×3組)いるが、うち準々決勝に進出したのは33組。準々決勝進出率は78%だ。ちなみに2回戦全体の準々決勝進出率は約19%(593組出場、115組通過)。ラスト3番手を務めながら準々決勝進出が叶わなかったのは9組(モンスターエンジンダブルアート変ホ長調、5次元のシャボン玉、ブルーウェーブ、ハイトーン兄弟、ホタテーズ、てるてる娘、馬鹿よ貴方は)。

 さらに、準決勝進出者25組のうち、2回戦各公演でラスト3番手を務めていたのは16組もいる。準決勝進出率は64%だが、準々決勝全体における準決勝進出率は約22%なので、これまた高い数値だ。

 2回戦でモタレorシバリを務め、決勝進出を決めた具体的なコンビ名を挙げると、、アキナ(10/26モタレ)、東京ホテイソン(11/4夜シバリ)、オズワルド(11/4夜モタレ)、ウエストランド(11/5夜モタレ)。つまり、M-1グランプリ2020の決勝ストレート進出メンバー9組のうち、なんと8組が、2回戦でラスト3番手を務めていたことになる。

 M-1は毎年、決勝進出者がどのようなメンバーになるのか、お笑いファンの間でもちきりになるが、今年に関しては2回戦各公演のラスト3組を注視していれば、ある程度は予想がついたのだ(過去がどうだったかは面倒くさいので調べていません)。

 唯一の例外が、ユニットコンビのおいでやすこが。2回戦は11/4のAグループというかなり早い出番で、以降もまったくトリ近くに出番が配置されなかったにも関わらず、決勝まで登りつめた。お見事!


■準々決勝以降もトリは強いが、それ以外の出番はあまり関係ない?

 これらの情報を見ると「決勝進出者は、2回戦の出番の時点で決まっていた!M-1出来レースなんだよ!キリッ」としたり顔で言い切りたい気にもなるが、よくよく考えれば、これは至極当然のことといえる。

 そもそも漫才の公演は、トリに近づくほどベテランや実力者、花形の芸人が揃うのは当たり前のこと。2回戦にトリ・モタレ・シバリで出場したメンバーが、準々決勝・準決勝・決勝に進出するというのは、M-1がそもそも漫才興行であることを考えれば「そりゃそうだ」としか言いようがない。それを証明するように、2回戦14公演、準々決勝2公演、準決勝1公演でトリを務めたすべての組が通過している。

 といいながらも、M-1は普通の漫才興行とはちょっと違う側面もあり、ベテランや決勝出場経験があるメンバーが、必ずしもトリ近くに出演するとも限らない。中には、まるで運営側が試しているのではないか?と思いたくなるような出番順も中には見られる。

 たとえば過去に決勝進出経験もあるミキの2回戦は、11/1のAグループだった。彼らのキャリアを考えればあまりに早すぎる登場で、おそらくはスケジュールの都合かと思ったのだが、準々決勝もBグループと、比較的早めの出番だった。これは運営側が意図したことなのだろうか?

 同じく過去に決勝進出経験のあるマヂカルラブリーは、11/2の公演ではトリを務めたが、準々決勝ではAグループ、準決勝では8番目と、こちらも比較的早めの出番が続いた。“もしや運営側の評価が低いのか?”と疑いの目を向けたくなるが、最終的には決勝進出を遂げた。たまたまその出番になっただけなのかもしれない。

 以下に2回戦・準々決勝・準決勝を勝ち抜いた組の出場グループをまとめてみた。2回戦はあからさまに序盤(A~Cグループ)の勝ち抜き数が少なく、後半になるにつれて数が増えている(D~Fグループ)。しかし準々決勝になると、序盤でも合格組が出ており、後半有利の“魔力”は弱まっているように見える。上位に進めば進むほど、序盤にも中盤にも終盤にも実力者が勢揃いし、出番順の差もなくなってくるのだろう。


 【2回戦を勝ち抜いた組の出番グループ(関東・関西開催合計)】
A…8  B…10  C…9  D…19  E…35  F…34
※出場593組中、115組が勝ち抜き

【準々決勝を勝ち抜いた組の出番グループ(大阪)】
A…1  B…3  C…2  D…1  E…3  F…2
※出場47組中、12組が勝ち抜き

【準々決勝を勝ち抜いた組の出番グループ(東京)】
A…1  B…0  C…3  D…0  E…1

F…2  G…1  H…1  I…4
※出場68組中、13組が勝ち抜き。敗者復活除く

【準決勝を勝ち抜いた組の出番順】※出番順
04…ウエストランド
08…マヂカルラブリー
13…アキナ
14…おいでやすこが
15…オズワルド
18…東京ホテイソン
22…見取り図
25…ニューヨーク ☆モタレ
26…錦鯉 ☆トリ
※出場26組中、9組が勝ち抜き


 

M-1をより楽しむなら、ラスト3組に注目しよう

 ここまで述べてきた通り、M-1における「トリ」の勝ち抜き率の高さは歴然としており、かつラスト2番目の出番であるモタレ、ラスト3番目のシバリについても、トリに次ぐ勝ち抜き率であることが分かった。

 決勝進出までの予選が漫才公演の形式で行われる以上、トリ・モタレ・シバリに実力者やベテランを配置するのは当然のことなので、M-1が現システムで行われる限り、この傾向は今後もおそらく続いていくことだろう。

 M-1をより楽しむのであれば、予選の出番順に目を通しておくことをオススメしたい。


本日の結論:出番が一度もトリ近くにならず、決勝に進出したおいでやすこがはスゴイ!