もちやなこと

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「THE W」は“女たちの残念M-1”か? 女芸人がM-1で活躍する可能性を探る

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 The W2020の決勝進出者のメンバーを見て、気になることがあった。

 「アレ、ほとんどがM-1に出場していなかったか?」

 そう、「THE W」の決勝進出者10組のうち、M-1の2回戦に出場したコンビ・トリオはなんと8組もいる。THE W出場者の80%が、M-1とのダブル出場なのである。ほとんど“残念M-1”みたいな大会になっているのだ。

 THE Wという大会ができた今、女芸人はM-1で活躍できる可能性はあるのか? ちょっと不安になったので、その可能性を調べてみた。

※THE Wはコントも可ですが、本稿はM-1との対比が目的なので、敢えて漫才に絞って書いています。


■THE Wは、実質的に「女たちの残念M-1グランプリ」である

 まずは、冒頭で軽く触れた、「THE W」の決勝進出者10組のうち、M-1の2回戦に出場した8組を確認してみよう。その8組とは、ぼる塾、にぼしいわし、紅しょうが、Aマッソ、オダウエダ、ターリーターキー、はなしょー、TEAM BANANAだ。ゆりやんレトリィバァ、吉住、新型コロナウイルス感染のため出場できなくなったスパイクは、M-1に出場していない。

 この8組のうち、準々決勝に進出しているのは4組(ぼる塾、にぼしいわし、紅しょうが、Aマッソ)で、4組すべてが準々決勝で敗退している。

 「THE W」については、その大会のレベルについてとかくケチをつけられ気味ではあるが、こうした客観的事実から見ると、コンビ・トリオのレベルとしては、「M-1の準々決勝~2回戦レベル」であるということがいえそうだ。これを高いと見るか、低いと見るかは、読者の皆様の判断に委ねたい。

 ちなみに2020年のTHE Wの準決勝38組の中で、うち23組が2020年のM-1に出場している※。割合でいえば60%。もともと準決勝の時点で“M-1濃度”が高かったが、決勝進出者は80%と、さらに濃度が高まるということになる。

 ここまでM-1濃度が高いとなると、THE Wが“残念M-1”になっているのは、紛れもない事実といえるかもしれない。

※23組のうち、M-1 2回戦進出は18組。M-1出場時にメンバーを替えているケースも含む。「エアコンぶんぶんお姉さん」は「タナカ電機」でM-1出場。「黒髪サンバ」は「太陽の小町」「トロピカルマーチ」でM-1出場。「合わせみそ」は「おとぎばなし」でM-1出場(吉田のみ)。「POFFY」は「スーパーニュウニュウ」「ポンループ」でM-1出場。「ヒコロヒー」は「ヒコロヒーとみなみかわ」でM-1出場。


M-1に女性が活躍する余地はあるのか?

 THE Wという大会が創設された影響かどうかは知らないが、2020年のM-1は、女性があまり活躍した大会とはいえなさそうだ。

 2回戦出場の中で、メンバーに女性を含むコンビ・トリオは63組で、割合で見ると、2回戦出場全593組のわずか10%。うち女性のみのコンビは33組(同約5%)で、女性のみのトリオは、たった2組のみとなる(ぼる塾、女ガールズ)

 準々決勝に進出した、女性を含むコンビ・トリオは115組中12組。割合でいえば約10%で、これは2回戦出場の割合と同じ。うち女性のみのコンビ・トリオは5組(ぼる塾、にぼしいわし、紅しょうが、Dr.ハインリッヒ、Aマッソ)。女性を含むコンビは7組(ゆにばーす、ラランド、納言、蛙亭いなかのくるまシンクロニシティ、ヒコロヒーとみなみかわ)。準決勝に進出した女性を含むコンビ・トリオは、わずか2組のみである(ゆにばーす、ラランド[敗者復活])。

 役割分担で見ると、2回戦に出場した男女コンビ34組のうち、「女性がボケ役、男性がツッコミ役」は28組、「男性がボケ役、女性がツッコミ役」は6組だった。先に挙げた、準々決勝進出の男女コンビは、すべて「女ボケ、男ツッコミ」の組み合わせだった(ヒコロヒーとみなみかわは、役割が判断しづらいが……)。

 結果だけを見ると、女性コンビはTHE W、男性コンビはM-1という“棲み分け”が出来てしまっている現状がある。しかし、両大会に出場し、ダブルで優勝できる可能性を持っているのは、女性だけである。

 M-1に敗れた女芸人が、THE Wの優勝をきっかけに、M-1で結果を出す日も、いずれは来るだろう。頑張れ!(追伸:ゆりやんと吉住も負けるな!)


■おまけ:M-1 2回戦で敗退したけど目を通してほしい、女性(を含む)コンビ:ベスト5

1位☆テラリウム:ボケと「喘ぎ」の時代が到来 10/29[大阪]

 宝塚の男役のような麗しい出で立ちの梶原はるなさんから繰り出される「ヤギの肝臓」「鼻に磁石埋め込む」のようなサイコなボケに、池袋駅東口オタロードにいそうな眼鏡っ娘のゆきさんが、「まやかしを言うのはよしなさいよ~」などという珍妙な言い回しで、悶え喘ぎながら突っ込むという、あまりに個性的すぎるコンビ。まだデビューして数年だが、2019年は3回戦まで進出、2020年のTHE Wも準決勝に駒を進めている。スターの素質十分。M-1準々決勝到達も時間の問題か!?

 

2位◇ハイツ友の会:夢見る毒舌京女 10/28 [京都]

 小ボケを重ねていくツッコミレススタイル。話が思いつきでコロコロと変わっているように感じられるが、ところどころに毒が盛られており、しかも伏線も回収しているので、すべて計算ずくだ。何というシナリオ! 京都弁も心地よい。こちらもTHE W準決勝進出。

 

3位□スーパーニュウニュウ:コント風の世界観が漫才で輝く 10/31[東京]

 男女コンビというと、世界観のある女性の奔放なボケを、太い声の男性のツッコミで引き戻すという構図がよくあるパターンだが、彼らは実はツッコミもヤバイ奴というダブルボケスタイル。コントがメインのようだが、漫才の方が合っているのでは?

 

4位○風水:お笑い好きテレビ関係者の面白つぶやき  10/31[東京]

 今大会ではアナウンサーなどテレビ関係者の出場も見られたが、その中では彼らが最も面白かった。珍しい「男ボケ、女ツッコミ」というスタイルに、1人コント入り・メタ視点ネタのトレンドも採り入れ、ローテンションでテレビ関係者ならではの毒の効いたボケをかましまくる。アマチュアだが相当なお笑いファンと見た!

 

5位△バトルスコーピオン:漫才にもイケボの波が 11/4[東京]

ネタ自体はそこまで取り上げるほどでもないけど(失礼)、エエ声の男女が語り合うという、耳に優しいフォーマットが素晴らしい。残念ながら2回戦後に解散してしまったようなので、このスタイルを引き継ぐイケボ男女コンビの登場を勝手に希望。


本日の結論:テラニウムの梶原さんは重度のジャニヲタらしいで!やべえよな!